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伝聞法則の論じ方

司法試験の刑事訴訟法では伝聞法則が頻出ですが、受験生の多くが苦手としている分野です。この記事では、伝聞法則の論じ方の基礎を解説していきます。

 

|伝聞証拠の意義

伝聞法則の意義は①公判廷外の供述で②要証事実との関係で内容の真実性が問題となるものと説明されることが多いです。この意義をかみ砕いて説明すると①公判廷外の供述=本当かどうかわからない、②要証事実との関係で内容の真実性が問題となる=間違いだと困るということです。

 

|伝聞法則の論点は何を問うているのか

司法試験で伝聞法則が出題される場合は、多くの場合、上記①②を満たすかすなわち、伝聞証拠として原則として証拠能力が否定されるか、という点が問われます。出題者は、この論点を問うことにより、要証事実に対する理解と証拠構造を把握する力を問うています。受験生としてもこの部分に配点があると考えて問題を検討するべきです。

 

|「AがVを包丁で刺すのを見た」というWの日記

目撃者Wの日記において、被告人Aが、被害者Vを包丁で刺すのを見たという内容が記載されていたとします。この日記を証拠とする際に、伝聞証拠にあたるか否かが問題となります。まず、①について検討をします。①について検討する際は「誰の」供述かを特定します。この日記は、公判廷外でWが書いたものですから、「公判廷外におけるWの供述」ということができます(※供述は話し言葉、書き言葉、動作による言葉のいずれも含む)。次に②について検討をします。ここでは、要証事実(当該証拠によって証明しようとする事実)を特定します。例えば、「Wが日本語を読み書きできたこと」を要証事実する場合もあれば、「AがVを包丁で刺したこと」(Aの犯人性及び殺害行為)を要証事実とする場合もあるでしょう。要証事実は無数に想定されます。仮に、前者の要証事実の場合、Wの日記の存在自体を立証すれば足りますから、内容の真実性は問題となりません。後者の要証事実の場合、内容が真実でなければ立証につながりませんから、内容の真実性が問題となります。

 

|要証事実と立証趣旨との関係

端的に説明すれば、立証趣旨は当事者が設定するものであり、要証事実は裁判所が認定するものです。当事者主義的訴訟構造より、通常は、当事者の設定した立証趣旨を参照して裁判所が合理的な要証事実を認定します。そのため、立証趣旨と要証事実とは整合する場合が多い(司法試験においえては立証趣旨の文言をそのまま要証事実に使えることも少なくない)ですが、場合によっては、立証趣旨をにらみつつ、自分の言葉で要証事実を設定する方が答案を書きやすいこともあります。

 

|答案を書いてみる

では、実際に答案を書いてみます。

 

(伝聞証拠の意義)

本日記は、Wの公判廷外の供述である(①)。

立証趣旨は、AがVを殺害したことである。

本日記により、AがVを殺害したとの事実が基礎づけられるから、かかる事実を要証事実と解する。

そして、本要証事実を立証するためには、供述内容が真実であることが前提となる。

したがって、要証事実との関係で内容の真実性が問題となる(②)。

以上より、本日記は伝聞証拠にあたる。

 

ポイントは下線部です。立証趣旨に触れつつ、裁判所の立場で立証趣旨を参照して要証事実を設定していきます。この要証事実設定の中で、証拠構造も明らかにします。

 

いかがでしょうか。伝聞法則は非常に理解しにくい分野ではありますが、論点の本質と、出題意図をつかめば、それほど難しいものではありません。もちろんバリエーションは多岐にわたりますが、その点は、演習を通じて身につけていってください。