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表現行為と萎縮的効果(特定表現に対する不利益取り扱い)

H27年司法試験憲法の出題趣旨より引用です。私人が特定の表現行為を行ったことにより不利益な取り扱いを受けた場合に「一般に当該問題について意見等を述べることを萎縮させかねないこと(表現の自由に対する萎縮効果)をも踏まえた検討」することが求められています。初見では対応が難しい論点だと思いますので少し解説を加えます。

 

表現の自由と萎縮的効果についての一般論

表現の自由規制については「萎縮的効果」という言葉がよく用いられますが、典型的には、文面審査の場面かと思われます。漠然不明確故に無効の法理は、表現に対する「萎縮的効果」をその根拠とします。このように、表現の自由に対する規制は、表現に対する萎縮を招くということは受験生に広く認知されています。

 

本問が適用違憲の問題であること

本問は、適用違憲の問題です。法令そのものの合憲性ではなく、法令に基づく権限に基づく具体的行為の合憲性が問題となります。本問のように「法令」の文言が問題文中に明示されないこともあります。そのような場合は、当該具体的行為の合憲性を端的に検討するようにしましょう。

 

なぜ「萎縮的効果」を明示的に論じるのか

文言上表現の自由を規制する法令が存在する場合、当該法令の存在自体がすでに表現の自由に対する萎縮的効果を有します(ここでいう「萎縮的効果」は一般的な語義であり、必ずしも違憲なものに限定しません)。しかし、文言上は表現の自由とは無関係な法令を根拠に特定表現をした者に対して不利益に取り扱った場合、当該取り扱いにより、初めて、表現に対する「萎縮的効果」が生じます。したがって、かかる不利益取り扱いの合憲性を検討する際には、当該取り扱いの名宛人に限らず、広く一般に対する「萎縮的効果」の問題を検討してほしいというのが出題趣旨の意図だと思われます。

 

過去問を適切に分析する

表現の自由」と「萎縮的効果」との関係は、潜在的に受験生の頭の中にあると思われますが、「文言上表現の自由と無関係な法令を根拠に特定表現をした者を不利益に取り扱った場合」、当該取り扱いが広く一般に対する「萎縮的効果」を有するという、いわゆる表現規制法令が存在する問題では当然の前提となっている問題について、明示的に論じなければならないということが、H27年憲法から得られるメッセージです。当時の受験生は初見であったため、こうした問題意識には手も足も出なかったものと思われます。しかし、既出である以上次はそうはいきません。過去問を適切に分析して周囲に差をつけましょう。