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「申請に対する処分」該当性の論じ方

申請に対する処分は行政手続法第2条第2号および同条第3号により定義づけられ、同法第2章に規定があります。司法試験・予備試験において「申請に対する処分」該当性が問われた際には論じ方に工夫が必要となります。

 

「処分」と「申請に対する処分」の関係

日本語の語義からも明らかですが「申請に対する処分」は「処分」の一種です(その他の処分はいわば職権発動による処分です)。「申請」とは、私人が行政に許認可を求める行為で法令上行政に応答義務が課せられているものをいいます。すなわち、この「応答」が「申請に対する処分」になるわけです。

(図)

 処分=申請に対する処分+職権発動に対する処分

 

処分性が問われた際の対応

処分性が問われた場合は処分の要件である①公権力性、②直接具体的法効果性を認定します。もっとも、申請に対する処分の該当性が問題となる場合には、①及び②に加え、当該処分が③申請に対する処分であることをも認定する必要があります。したがって、論理的には、①~③をもって、申請に対する処分であると認定することになります。

 

論じ方の工夫

①公権力性の要素は、行政が、法律に基づいて、一方的に行う行為であることです。すなわち、「法律に基づいて」という要素を満たさなければ、処分性は認められません。一方の「申請」も、法令上行政に応答義務が課されているという要素が必要です。したがって、上記①公権力性及び③申請に対する処分の双方において、法令上の根拠が存在することが必要となるわけです(法令=法律+法規命令ですが、ほぼ同義としてここでは扱います)。①及び③の検討において、法令上の根拠の存在が要件となりますので、論じ方に工夫が必要となります。具体的には次のように論じます。

 1.私人の行為が「申請」に該当することの認定

 2.公権力性の認定

 3.直接具体的法効果性の認定

まず、先行して、私人の行為が「申請」に該当することを認定します。これにより、法令上行政に応答義務が認められるといえれば、問題となっている行政の行為は、法令上義務付けられた応答にあたりますから、公権力性の要素である「法律に基づいて」も満たされることになります。上記1及び2での検討事項がオーバーラップするところ、先行して、私人の行為が「申請」に該当することを認定すると論述がスムーズに流れます。

 

申請権の有無が明らかでない場合

「申請に対する処分」該当性が問題となる場合、申請権が保障されているか否かが法令の明文上明らかでないことが多いと思われます。その場合、申請権が保障されているか否かは「個別法の仕組み解釈」によります。文言上「申出」等と記載されている場合でも、個別法の仕組み解釈により、申請権が保障されていると解することができれば、私人の行為は「申請」にあたるということになり、また、これに対する行政の行為も(法令に基づく)応答として公権力性が肯定されることになります。

 

関連論点

行政指導に従わないことを理由に許認可にかかる処分を留保することは一定の場合に、違法となります(行手法33条、最判昭和60年7月16日)。また、私人が申請をしたにも関わらず、行政がこれを受理しない又は返戻したような場合、不受理や返戻は、法律上認められた行為ではなく処分性を有しないため、いまだ応答がないものとして、不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項)及び申請型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)を併合提起することとなります。不受理・返戻を申請拒否処分として扱って、取消訴訟+申請型義務付訴訟としないよう注意しましょう。