目的手段審査(3つの基準)
●目的手段審査は違憲審査基準の一つであり司法試験憲法において極めて重要なトピックの一つです。しかし、この目的手段審査について正確に理解している人は意外と少ないように思います。この記事では、目的手段審査の役割と使い方について解説します。
|目的手段審査とは
目的手段審査は、何らかの権利を規制する法令等が憲法に適合するか否かを判断する違憲審査基準の一つであり、①規制目的の合理性(目的審査)と②規制目的と規制手段との関連性(手段審査)を順次検討し、①又は②で違憲の結論が導かれる場合に、当該法令を違憲とする審査基準です。
|目的手段審査の厳格度の意味
目的手段審査の厳格度は「規制される権利の性質」「規制態様」等により決定されます。厳格な基準は、いわゆる違憲推定の基準であり、緩やかな基準は、いわゆる合憲推定の基準ですから、これらの基準を選択した場合は、基準選択の段階で、合憲/違憲の結論が決まることになります。これに対し、中間的な基準は、合憲・違憲のどちらも推定しないので基準へのあてはめにより合憲/違憲の結論が決まることになります。受験生としては、基準選択は、基準選択段階で合憲/違憲の結論を決めるケースなのか、あてはめ段階で合憲/基準の結論を決めるケースなのかをふりわける作業であると理解をすればよいです。
|基準選択の指針
違憲審査基準は自由に選択してよいわけではありません。ある程度類型的な判断が求められます。例えば、表現の自由(憲法21条1項)に対する規制であれば、通常は、厳格な基準か、中間的な基準しか選択できません。これに対し、経済的自由権(憲法22条2項)に対する規制であれば、通常は、中間的な基準か緩やかな基準しか選択できません。目的手段審査は、権利の内容により、ある程度審査基準の選択肢を限定することで、表現の自由等重要な権利に対する規制に対して安易に合憲との判断がなされないようにする意義があります。
|立法裁量とは
目的手段審査の厳格度は立法裁量の広狭と相関します。すなわち立法裁量が広い場合は審査基準は緩やかになり、立法裁量が広い場合は審査基準は厳格になります。もっとも、立法裁量という言葉は、経済的自由権規制の場面でのみ用いる方が無難です。表現の自由で厳格審査基準を選択し得る場面で「立法裁量」という言葉を用いると、読み手が「(広い)立法裁量」を認めていると誤解し、厳格な基準が妥当し得る表現の自由に対する理解が不十分であると判断されるリスクがあるためです。
|目的手段審査のあてはめ
目的審査では、まず目的自体の合理性を検討します。目的の中に「AのためにB」という因果関係がある場合にはこの因果関係自体を否定できる可能性を考えます。次に、規制される権利と、規制により保護される公益とをおおざっぱに比較します。すなわち、「(規制により保護される公益)のために、(規制される権利)のような重要な権利を規制すべきではない」と明確に言える場合は、目的に合理性がないということができます。
手段審査では、目的と手段との関連性を検討します。まず、手段が目的に適合するかを検討します。手段が目的とおよそ関連しない場合、また、手段がむしろ目的を阻害する場合には、手段が目的に資するとはいえないとして違憲になります。次に、手段が目的にとって必要かを検討します。手段が目的にとって有効とは言い難い場合、また、手段が目的にとって有効ではあるがより権利規制の程度の小さい有効な手段が他にある場合(LRAの基準とイコールではないが発想は近い)には、手段が目的にとって必要とはいえないとして違憲になります。
|法令等の読み方
以上の理解を前提に違憲審査基準の設定・あてはめを適切に行うためには、法令等がどのような権利を規制しているかを特定しなければなりません。そのためには、まず、法令等から、一定の行為を禁止又は義務付けている規定(禁止等規定)を特定し、これがなければ、法令等が一定の行為を行った場合又は行わなかった場合に不利益を課している規定(不利益規定)を特定します。憲法答案の構成は、①権利保障、②規制、③違憲審査基準の設定(権利の性質/規制態様で決定)、④あてはめになりますが、上記規定を特定することで、①~③までの論述に必要な材料がそろいます。
目的手段審査を適切に用いるためには、目的の認定を正確に行わなければなりません。具体的な法令の第1条の目的規制が、本件で問題になっている権利規制の目的とは限りません。問題文にヒントがある場合もありますので、よく読みながら、「規制そのものの目的」を特定してください。
|目的手段審査の性質を理解した上でのテクニック
目的手段審査は、厳格な基準(違憲推定の基準)、中間的な基準(合憲・違憲のどちらも推定しない基準)、緩やかな基準(合憲推定の基準)に分かれます。原則として、基準設定、あてはめの双方に十分な筆量を割くべきなのですが、経済的自由権規制では、3個以上の規制が問題となり、制限時間内にこれら全てについて論じなければならないということがあります。このような場合に、中間的な基準が妥当する規制と緩やかな基準が妥当する規制とを区別し、緩やかな基準については、合憲推定であるという理由であてはめをあっさり行い(規制目的は~であるから正当であり、手段は~であるからっ目的と合理的な関連性もあり合憲である等)、中間的な基準が妥当する規制についてのあてはめに筆を割くというメリハリが考えられます。
|目的手段審査は万能ではない
目的手段審査以外の違憲審査基準が用いられている判例の事案と類似の事案については判例が用いた違憲審査基準を利用することが考えられます(事前抑制禁止の法理、目的効果基準等)。
規制される権利と規制により保護される利益が等価値的である場合には敢えて比較衡量を用いるということも考えられます。この場合は、規制される権利を中心として規制の必要性(規制により保護される利益の重要性)、規制の相当性(規制される権利の性質及び規制態様を踏まえた評価)という流れで書くと答案が書きやすくなります。
規制目的が複数あるような場合には目的手段審査よりも様々な事情を総合的に考慮できる総合考慮基準を創作することが考えられます。この総合考慮基準は、「~の場合には、違憲である」という規範であり、裁量論ではないことに注意が必要です(司法試験憲法は重要な権利利益を問題にしているため、裁量論を用いることは原則としてありません)。
|目的手段審査を利用する際のNGリスト
・目的審査の厳格度と手段審査の厳格度が整合していない
・表現の自由規制で緩やかな基準/経済的自由権規制で厳格な基準を選択
・目的審査のあてはめがない
・手段審査において「他に選びうるより制限的でない手段」を示しつつその手段が目的との関係で有効ではない(他に選びうるといえない)あてはめ
・厳格な基準で合憲の結論/緩やかな基準で合憲の結論
その他、必要に応じて出題趣旨や採点実感を熟読してNGリストを押さえてください。