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司法試験・予備試験合格のためのHow toをClearかつConciseに伝えます。

About This Blog

司法試験講師Takumi Aikawaが司法試験・予備試験受験生が効率よく実力を飛躍させることができるよう有益な情報を継続的に発信します。併せて新規コンテンツイベントの告知も行います。

 

| AUTHOR PROFILE

京都大学医学部卒後、司法試験合格 

医師免許・実用英語技能検定1級等保有

大学受験時代より文系科目・理系科目をバランスよく得意とし、全国模試で国語2位、一橋大学模試で全受験者数8位を取得したこともあります。大学在学中の受験指導では、大阪医科大学医学科、大阪歯科大学歯学科、関西医科大学医学科、京都大学工学部、京都薬科大学薬学科、近畿大学医学部医学科、和歌山県立医科大学医学科等(五十音順、いずれも家庭教師のみの実績)等の合格実績を持ちます。現在は、大学受験指導からは退き司法試験指導に精力的に取り組んでいます。複数分野を広く学んだ経験を生かし、法律学習における「暗黙知」を解きほぐすことを目標としています。

 

| CONCEPTS

司法試験・予備試験突破に必要な力は①基本的知識、②論理性、③具体性を備えた答案を書くことです。司法試験の本番では「条文」「問題文」という参照可能な資料をもとに未知の事案に対して自分の考えを回答することが求められます。受験生に与えられた「裁量」が非常に大きい反面暗黙知とされる部分も多くどのように合格にアプローチすればよいのか迷いやすいことも司法試験・予備試験の特徴です。私の受験指導では司法試験に上位合格(論文16位・公法系1位・全科目A)した経験を踏まえ(再現答案はこちら)、司法試験・予備試験にかかる「暗黙知」を可能な限り言語化して再現可能な形で受験生に伝達することを目指しています。

 

| WORKS 

bexa.jp

bexa.jp 株式会社BEXAにて上記コンテンツ等を配信中。

『司法試験合格答案作成ノート』は司法試験合格答案作成のための暗黙知言語化・体系化して教材化したものでユーザー数は1000名を超えています。

その他、答案添削指導経験多数あり、法科大学院アカデミックアドバイザーを兼任し、数多くの司法試験・予備試験受験生をサポートしています。

 

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司法試験のデジタル化(CBT方式について)

令和8年度司法試験よりCBT方式による試験が導入されます。法務省のWebサイトで体験版が公開されているので早速体験してみました。

■ 法務省:司法試験及び司法試験予備試験のデジタル化について

 

| 体験版の雑感

 まずは体験版を利用してみての雑感です。左側に問題文、右上に法文、右下に答案が位置しています。法文を選択した上で、キーワード検索をかけると検索結果がヒットします。見出しも検索結果に含まれます。この点はe-govで検索を書ける場合と同様です。答案は紙媒体の答案と同様一行の幅が広くなっています。適宜加筆修正が可能でありこの点がデジタル化で最も大きく変わったところであると思われます。以下、問題に取り組む際の注意点について気づいた点を列記していきます。

 

| 綺麗な答案を目指さない

答案の加筆修正が自由にできるようになったことによりこれまで以上に「綺麗な答案」を作ることができるようになります。例えば、よりコンパクトな表現を目指したり、答案全体での表記ぶれを修正したりといったことができるようになります。しかし、受験生にとってはこの点が落とし穴となる可能性があります。なまじ加筆修正ができてしまうがゆえに、限られた時間を(実質的に点差に影響しないと思われる)形式面の加筆修正に費やしてしまい結果的に問題の検討や加点要素への言及に十分な時間を充てることができなくなるという事態が想定されます。基本的には(紙媒体の時と同様)一度書いたものは修正しないという方針で答案作成を進めるのがよいと思います。

(もっとも、デジタル化により受験生全体の文章表現が洗練される可能性があるところ、あまりにも形式面が無茶苦茶な場合には、他の答案より評価で沈んでしまうという可能性もあります。そのため、最初から、ある程度綺麗な文章を書くことができるよう、答案の型、文章の型をきちんとインプットし、心理的に抵抗を感じることなく「先へ先へ」と進んでいけるような事前準備を行うことが重要になると考えます)

 

| 条文を引くタイミングを考える

紙媒体の場合は多くの受験生は条文を引きながら答案を書き進めていたと思います。デジタル化により随時条文文言や条文番号の挿入が可能となったことから事前に頭に入っている条文についてはある程度まとめて検索をするということも考えられます。このあたりは事務処理の効率化という観点からの検討になります。また、未知の論点など、条文を検索しながらでないと思考できないという場合もあるでしょう。このような場合には、答案作成の手を止めて条文を検索することもやむを得ないと思います。答案構成の決定に条文が必要な場合とそうでない場合とを切り分けた上で、答案作成の邪魔にならないよう効率よく条文を引くことが重要になると考えます。

 

| 条文検索の速度で差が生まれる

デジタル化によりキーワードによる条文検索が可能となりました。このことは、受験生に対して大きなインパクトを持ちます。条文の内容だけでなく条文の文言が頭に入っている受験生は、キーワード検索で即座に目的の条文に到達することができます。これに対し、条文の内容は頭に入っているものの条文の文言が頭に入っていない受験生(典型的には講学上の概念だけを記憶して条文の文言を記憶していないケース)は、検索機能のアドバンテージを生かすことができません。日頃から条文に親しみ、条文の文言を記憶している受験生は高速で目的の条文を検索でき、そうでない受験生はこれまでと同様の方法で条文を検索するしかない、という点で、受験生間に差が生まれることになります。したがって、これからの司法試験受験生は、重要な条文については、条文の文言(文言全てではなく検索で引っかけられるキーワード)を頭に入れ、検索機能を味方につけられるように準備をしておくことが重要になると考えます。

 

| 答案構成がやりにくくなる 

紙媒体の時は問題用紙に手書きで情報を書き込むなどして比較的に自由に答案構成をすることができましたが、デジタル化となるとそうはいきません。思考のアウトプットにおいては、デジタルより紙媒体の方が優れているというのは多くの方が経験していることでしょう。しかしながら、試験方式が変わった以上、これに対応していくしかありません。具体的には、答案構成を極力省力化することが重要となります。受験生の答案構成用紙を見ていると、例えば、民法において、訴訟物、請求原因、抗弁等を列記した上でこれらをどのように論じるか等詳細に構成しているものが散見されます。これは明らかに演習不足です。十分に演習を積んだ受験生であれば、例えば、特定の抗弁が問われている事案においては、訴訟物・請求原因を端的に指摘した上で、特定の抗弁について法律上又は事実上の論点について問題提起を行い、結論を導けばよいという大枠に加え、具体的な文章表現まで頭に入っています。現行司法試験の過去問は十分に蓄積されており、具体的な設問においてどのような文章で論じればよいかも概ね固まっています。この固まった文章表現をきちんとインプットすることで、答案構成を大幅に省力化することができます。加えて、現行司法試験は、旧司法試験と比べて、論点相互の関係性を現場思考で問うような出題は少なく、構成力で差がでる場面は多くありません。私が合格直後から発信していることですが、「答案構成なしでの起案」を理想としつつ、可能な限り答案構成を省力化することが、デジタル化への対応への早道だと考えます。

 

| 最後に

以上は体験版の率直な感想となります。紙媒体でもデジタル化でも受験生に求められる能力は変わりません。しかし、作業効率を高めるための工夫については、変化が生じることでしょう。実務家はだれしもPCを利用して起案をしていますが、起案速度には個人差があります。これは、各種ツールの使い方だけでなく、事前の知識量や、文章表現のストックに大きな個人差があるからです。こうした個人差が、司法試験受験において、点数の差となって現れることは、想像に難くありません。デジタル化に慣れつつ、これまでと同様、基本的知識のインプット、過去問分析、起案練習を継続し、試験方式の変化を味方につけられるよう頑張ってください。

目的手段審査(3つの基準)

●目的手段審査は違憲審査基準の一つであり司法試験憲法において極めて重要なトピックの一つです。しかし、この目的手段審査について正確に理解している人は意外と少ないように思います。この記事では、目的手段審査の役割と使い方について解説します。

 

目的手段審査とは

目的手段審査は、何らかの権利を規制する法令等が憲法に適合するか否かを判断する違憲審査基準の一つであり、①規制目的の合理性(目的審査)②規制目的と規制手段との関連性(手段審査)を順次検討し、①又は②で違憲の結論が導かれる場合に、当該法令を違憲とする審査基準です。

 

目的手段審査の厳格度の意味

目的手段審査の厳格度は「規制される権利の性質」「規制態様」等により決定されます。厳格な基準は、いわゆる違憲推定の基準であり、緩やかな基準は、いわゆる合憲推定の基準ですから、これらの基準を選択した場合は、基準選択の段階で、合憲/違憲の結論が決まることになります。これに対し、中間的な基準は、合憲・違憲のどちらも推定しないので基準へのあてはめにより合憲/違憲の結論が決まることになります。受験生としては、基準選択は、基準選択段階で合憲/違憲の結論を決めるケースなのか、あてはめ段階で合憲/基準の結論を決めるケースなのかをふりわける作業であると理解をすればよいです。

 

基準選択の指針

違憲審査基準は自由に選択してよいわけではありません。ある程度類型的な判断が求められます。例えば、表現の自由憲法21条1項)に対する規制であれば、通常は、厳格な基準か、中間的な基準しか選択できません。これに対し、経済的自由権憲法22条2項)に対する規制であれば、通常は、中間的な基準か緩やかな基準しか選択できません。目的手段審査は、権利の内容により、ある程度審査基準の選択肢を限定することで、表現の自由等重要な権利に対する規制に対して安易に合憲との判断がなされないようにする意義があります。

 

立法裁量とは

目的手段審査の厳格度は立法裁量の広狭と相関します。すなわち立法裁量が広い場合は審査基準は緩やかになり、立法裁量が広い場合は審査基準は厳格になります。もっとも、立法裁量という言葉は、経済的自由権規制の場面でのみ用いる方が無難です。表現の自由で厳格審査基準を選択し得る場面で「立法裁量」という言葉を用いると、読み手が「(広い)立法裁量」を認めていると誤解し、厳格な基準が妥当し得る表現の自由に対する理解が不十分であると判断されるリスクがあるためです。

 

目的手段審査のあてはめ

目的審査では、まず目的自体の合理性を検討します。目的の中に「AのためにB」という因果関係がある場合にはこの因果関係自体を否定できる可能性を考えます。次に、規制される権利と、規制により保護される公益とをおおざっぱに比較します。すなわち、「(規制により保護される公益)のために、(規制される権利)のような重要な権利を規制すべきではない」と明確に言える場合は、目的に合理性がないということができます。

手段審査では、目的と手段との関連性を検討します。まず、手段が目的に適合するかを検討します。手段が目的とおよそ関連しない場合、また、手段がむしろ目的を阻害する場合には、手段が目的に資するとはいえないとして違憲になります。次に、手段が目的にとって必要かを検討します。手段が目的にとって有効とは言い難い場合、また、手段が目的にとって有効ではあるがより権利規制の程度の小さい有効な手段が他にある場合(LRAの基準とイコールではないが発想は近い)には、手段が目的にとって必要とはいえないとして違憲になります。

 

|法令等の読み方

以上の理解を前提に違憲審査基準の設定・あてはめを適切に行うためには、法令等がどのような権利を規制しているかを特定しなければなりません。そのためには、まず、法令等から、一定の行為を禁止又は義務付けている規定(禁止等規定)を特定し、これがなければ、法令等が一定の行為を行った場合又は行わなかった場合に不利益を課している規定(不利益規定)を特定します。憲法答案の構成は、①権利保障、②規制、③違憲審査基準の設定(権利の性質/規制態様で決定)、④あてはめになりますが、上記規定を特定することで、①~③までの論述に必要な材料がそろいます。

目的手段審査を適切に用いるためには、目的の認定を正確に行わなければなりません。具体的な法令の第1条の目的規制が、本件で問題になっている権利規制の目的とは限りません。問題文にヒントがある場合もありますので、よく読みながら、「規制そのものの目的」を特定してください。

 

目的手段審査の性質を理解した上でのテクニック

目的手段審査は、厳格な基準(違憲推定の基準)、中間的な基準(合憲・違憲のどちらも推定しない基準)、緩やかな基準(合憲推定の基準)に分かれます。原則として、基準設定、あてはめの双方に十分な筆量を割くべきなのですが、経済的自由権規制では、3個以上の規制が問題となり、制限時間内にこれら全てについて論じなければならないということがあります。このような場合に、中間的な基準が妥当する規制と緩やかな基準が妥当する規制とを区別し、緩やかな基準については、合憲推定であるという理由であてはめをあっさり行い(規制目的は~であるから正当であり、手段は~であるからっ目的と合理的な関連性もあり合憲である等)、中間的な基準が妥当する規制についてのあてはめに筆を割くというメリハリが考えられます。

 

目的手段審査は万能ではない

目的手段審査以外の違憲審査基準が用いられている判例の事案と類似の事案については判例が用いた違憲審査基準を利用することが考えられます(事前抑制禁止の法理、目的効果基準等)。

規制される権利と規制により保護される利益が等価値的である場合には敢えて比較衡量を用いるということも考えられます。この場合は、規制される権利を中心として規制の必要性(規制により保護される利益の重要性)、規制の相当性(規制される権利の性質及び規制態様を踏まえた評価)という流れで書くと答案が書きやすくなります。

規制目的が複数あるような場合には目的手段審査よりも様々な事情を総合的に考慮できる総合考慮基準を創作することが考えられます。この総合考慮基準は、「~の場合には、違憲である」という規範であり、裁量論ではないことに注意が必要です(司法試験憲法は重要な権利利益を問題にしているため、裁量論を用いることは原則としてありません)。

 

目的手段審査を利用する際のNGリスト

・目的審査の厳格度と手段審査の厳格度が整合していない

表現の自由規制で緩やかな基準/経済的自由権規制で厳格な基準を選択

・目的審査のあてはめがない

・手段審査において「他に選びうるより制限的でない手段」を示しつつその手段が目的との関係で有効ではない(他に選びうるといえない)あてはめ

・厳格な基準で合憲の結論/緩やかな基準で合憲の結論

その他、必要に応じて出題趣旨や採点実感を熟読してNGリストを押さえてください。

要件事実との付き合い方

●「要件事実」は「民法」の一部

●「要件事実」を学ぶと司法試験民法が分かる

●「要件事実」を学ぶと司法試験民訴法も分かる

 

司法試験受験生の皆さんは「要件事実」の学習に強い関心を持っているかと思います。「要件事実」を勉強しないといけないという気持ちと「要件事実」を学ばなくてもよいという気持ちとがせめぎ合い明確な学習方針を立てられない方も多いのではないでしょうか。この記事では「要件事実」が「民法」の一部であるということを前提としつつも「民法」のみならず「民訴法」の学習にも役立つということを説明していきます。

 

|「要件事実」は「民法」の一部

要件事実の定義には諸説ありますが、一つには、権利の発生、障害、消滅等の法律効果の発生に直接必要な主要事実のことを「要件事実」というとの立場があります。どのような立場を取っていただいても構いませんが、司法試験との関係では、「要件事実」とは、請求原因事実、抗弁事実等の具体的な事実を指すという程度に理解をしておけばよいでしょう。では、この「要件事実」としてどのような事実を摘示すればよいかを学ぶことで、司法試験民法の全体像が分かるのでしょうか。答えは否です。通常、あらかじめ想定された攻撃防御方法を前提に、「要件事実」を学習します。これは、事実摘示の訓練という意味合いもあり、典型的な主張・反論・再反論・・・の流れを前提に、どういった事実を「要件事実」として摘示すべきかを身に付けることを目的とするものです。一方で、司法試験民法では、そもそも、どういった請求が考えられるのか、その請求との関係でどのような要件が必要か、といった法律上の争点にも配点があります。この点を無視して、要件事実のみを摘示すると、法律上の争点に対する配点をまるまるおとしてしまうことになります。これでは、司法試験民法で十分な点数を稼ぐことはできません。「要件事実」は「民法」の一部に過ぎないことを意識しましょう。

 

|要件事実学ぶことで司法試験民法の理解が深まる

一方で「要件事実」学習は、民法の理解に大きく寄与します。まず、「要件事実」を押さえることにより、法律効果発生のためにどのような事実が必要かを理解することができます。例えば、売買契約に基づく代金支払請求権という訴訟物(権利)を主張し、これが認められるためには、請求原因において「原告が被告との間で売買契約を締結したこと」を主張立証すれば足ります。この「売買契約を締結したこと」を具体化すると「目的物」と「代金額又は代金額の決定方法の合意」とが必要になります。このように、要件事実を学ぶことで、「売買契約」の要素が「目的物」と「代金」であることを押さえることができます。司法試験の答案上で、この点をわざわざ説明することはないですが、「Xは、Yに対し、売買契約に基づく代金支払い請求権を主張し、1000万円の支払いを請求する。Xは、かかる主張を基礎づけるため、XがYに対して本件土地を1000万円で売却したとの事実を主張し、この事実は認められる。」等と論じることで、「目的物」「代金」の2つの要素を理解していることを示すことができます。「要件事実」を学ぶことで、あてはめの要素を押さえることができるのです。

 

|要件事実学ぶことで司法試験民訴法の理解も深まる

「要件事実」を学ぶことで民訴法の理解も深まります。例えば、弁論主義の適用範囲について論じる場合を考えます。弁論主義は、主要事実にのみ適用されます。そのため、弁論主義が適用されるか否かは、対象事実が主要事実か否かによることになります。ここで、「要件事実」を理解していないと、主要事実を特定することができず、結果的に、弁論主義の適用範囲についてのあてはめがぼやっとしたものになります。これに対し、「要件事実」を理解していると、あてはめが明快になります。「弁論主義第1テーゼは、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎としてはならないとするものであり、弁論主義は主要事実にのみ適用される。本訴訟において、Xは、Yに対し、売買契約に基づく代金支払い請求権を主張し、1000万円の支払いを請求するところ、売買契約締結の事実は、Xの請求にかかる請求原因事実たる主要事実であるから、この事実には、弁論主義第1テーゼが適用される。XもYも、いずれもこの事実を主張していないのであるから、裁判所は、この事実を判決の基礎とすることはできない。」というように、論じることができます。「要件事実」を学ぶことで、民訴法の理解が深まり、論述が明快になります。

 

このように、「要件事実」は、民法の一部に過ぎないという点で注意して取り組む必要のあるテーマではありますが、要件事実を学ぶことで、民法のみならず民訴法の理解も深まります。受験生においては、なるべく、要件事実について前向きに取り組むことで、民法だけでなく、民訴法も得意にしてほしいと思います。

「事実」と「評価」とで文を分けるべきか

●「事実」と「評価」を区別することは重要

●「事実」と「評価」とで文を切る必要はない

●「実務書面」と「司法試験」の答案は異なる

 

現行司法試験では豊富な事実が問題文中に記載されており、受験生としてはこれらの事実をなるべく多く指摘し、適切な評価を加えてあてはめを行う必要があります。また、事実の指摘及び評価については、それぞれの事実の関連性を意識しながら、結論である規範に向けて、論理構造を意識して記述する必要があります。

 

|「事実」と「評価」を混在しない

司法試験の採点基準については明示はされていないにせよ「事実」「評価」それぞれに配点が設けられていると言われています。そのため、「事実」と「評価」とを読み手が明確に区別できるように記述する必要があります。そのため、①問題文中の事実を書き写した上で、②これに対する適切な意味付けを行うことが原則となります。

 

|「事実」と「評価」とで文を分けるべきか

上記の通り「事実」と「評価」とを区別することは重要ですが「事実」と「評価」とで文を分ける必要はあるのでしょうか。合格者の中には、文を分けるべきであるとの意見があります。もちろん、「事実」と「評価」とで文を分けると、「事実」と「評価」とを区別することは可能です。しかし、文を分けることで必然的に文字数が増えます。司法試験は、時間制限と実質的な文字数制限とがあるわけなので、なるべく文字数を減らすべきです。そうであれば、「事実」と「評価」とで文を分けるべきか否かについても、慎重に判断をすべきです。

【私の再現答案(平成29年刑事系第2問)より抜粋】

・・・

(2)正当防衛(36条1項)により違法性阻却されないか。
ア、Aはまさに甲を殴ろうとして拳骨を甲の顔面に向けて突き出しているから、甲の身体に対する危険が現存しており「急迫不正の侵害」がある。
イ、乙は、このままでは甲が殴られると考えこれを防ごうとしているから急迫不正の侵害を認識しつつこれを避けようとする単純な心理状態があり防衛の意思がある。
 また、体当たりはAの攻撃を避けるためだから侵害に向けられたものである。
 よって「防衛するため」にあたる。
ウ、「やむを得ずにした」にあたるか。
 防衛行為として必要最小限度であることが必要である。
 共同正犯の正当防衛では、本要件は共同正犯者の行為を一体として考える。
 確かに、甲は28歳、170cm、65kgと若く平均的な体格の男性であり、乙も25歳、175cm、75kgという若く平均的な体格の男性であるのに対し、Aも、28cm、170cm、65kgという甲および乙と同程度の体格の男性であるから、甲と乙が2人がかりでAに体当たりする行為は、必要最小限度でないとも思える。
 しかし、Aはまさに甲の顔面に向けて殴りかかっており、これを避けるためには、甲と乙2人がかりでAの行動を制止するほかなかったといえる。
 よって、防衛行為として必要最小限度にあたり「やむを得ずにした」にあたる。
 したがって、正当防衛が成立し、暴行罪は成立しない。

・・・

上記の再現答案では「事実」と「評価」とを区別をしてはいるものの「事実」と「評価」とで文を分けてはいません。ところが、本試験での評価は刑事系全体で150位~200位の間でありあてはめにも十分な評価がなされています。その他の再現答案を分析しても分かることですが「事実」と「評価」とを同じ文中に記載すること自体に問題はありません。むしろ、時間制限や実質的な文字数制限をふまえると、「事実」と「評価」とで一文の中でまとめて記述する方が合理的であるといえます。

 

|実務書面と司法試験の答案の違い

実務書面と司法試験の答案とは違います。実務で弁護士が準備書面を作成する場合は、時間制限や文字数制限がない中で、事実関係を直接体験していない裁判所に対して事実を伝えることを重視する必要があります。そのためには、文の読みやすさを重視することになります。これに対し、司法試験の答案は、時間制限や実質的な文字数制限があるため、読みやすさをある程度犠牲にしても、少ない文字数に多くの情報を盛り込む必要があります(加点要素の密度)。また、司法試験の採点者は、問題文の内容が頭に入っているため、答案を読めば「事実」と「評価」とを区別することが可能です。したがって、ある程度読みやすさを犠牲にしてもデメリットは生じません。実務書面と司法試験の答案とにはこのような違いがあります。特に、実務家が読みやすさを重視した答案の書き方をアドバイスする際には、司法試験との関係でそのアドバイスが合理的なものか否かはよく検討をする必要があります。

会社法の条文の覚え方

司法試験対策では会社法の条文をきちんと押さえることが重要です。しかし、会社法の条文は数も多く、また、構造上も読みにくいため、受験生が敬遠しがちです。しかし、司法試験の本番では、適切な条文を「見つける」力も重要になるため、会社法の条文学習は必須となります。この記事では、会社法の条文学習の方法について説明します。

 

|入門講座からスタート

まずは予備校の入門講座からスタートをすればよいでしょう。いきなり条文の素読をしても頭にはいってこないですし何より疲れます。予備校の入門講座を聞きながらポイントとなる条文を押さえていきましょう。ここで重要なことは、会社法の条文構造の大枠をとらえることです。例えば、取締役会非設置会社の条文の後に取締役会設置会社の条文が登場することがありますが司法試験で出題されやすいのは後者の条文です。まずは会社法の条文配置の特色を理解しましょう。

 

|問題演習でストーリーを押さえる

次に具体的な事例問題を演習します。例えば、新株発行の瑕疵であれば、事前の対応として差止め請求を行い、事後の対応として新株発行の有効性を争う訴訟を提起するという方法があります。こうした問題を演習することで、新株発行の手続きに関する条文、差止め及び訴訟に関する条文をセットで記憶することができます。司法試験でも、典型的な事案を素材にした問題が出題される傾向にあるため、ストーリーをもって条文を押さえていくことは重要です。

 

|基本書を読み直して条文を読む

典型的な事例問題を押さえたら、次は、基本書を通読します。予備校の講義で利用したテキストでも構いません。全範囲を最初から最後まで通読しながら、登場する条文を六法で引いて確認をしていきます。こうすることで、体系的に条文を理解することができる上に、条文そのものを丁寧に読む機会が得られます。会社法の条文は一文が長く、かっこ書きなどにより意味が取りにくいものも少なくないため、基本書を読み直しながら、条文をきちんと押さえていく必要があります。

 

|覚えにくい条文を書き出して暗記する

最後の山場が覚えにくい条文です。例えば会社法第180条第4項は、「取締役は、第2項の株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。」とあり、株主総会における手続の規定が、「第二章 株式」の項目にあります。また、例えば、株主による取締役の行為の差止めは、「第三章 機関 第四節 取締役」の項目のうちの会社法第360条に規定されていますが、監査役による取締役の行為の差し止めは、「第三章 機関 第七節 監査役」のの項目にあります(差止め対象の項目か、差止め主体の項目かの違い)。このあたりは、本番で必ず混乱しますので、紙に書きだすなどして、丸暗記しましょう。

 

いかがでしょうか。会社法の条文は記憶することが非常に難しいですが、学習の到達度に合わせて様々な角度から繰り返し勉強をすることで、条文知識の穴を小さくすることが可能になります。地道な努力が必要にはなりますが頑張っていきましょう。

司法試験と別解筋を考える(令和6年司法試験論文試験問題を題材に)

司法試験における正解筋とは

司法試験が終わった後、受験生間で「正解筋は何か」という議論がなされます。おそらく、試験委員として想定している正解筋というものはあるのでしょうがこの筋から外れた答案であっても一定の加点がなされる場合は少なくありません。私はこれを「別解筋」と呼んでおり、試験本番で、複数の正解筋が想定された場合はいずれもを(加点が想定される)「別解筋」であると想定した上で、具体的・論理的に論述することを考えていました。

 

令和6年司法試験民事系第3問設問2

弁論準備手続において「当事者双方が口頭で自由に議論」した結果、当初の賃貸借契約解除理由である賃料未払いとは、異なる解除原因を構成する「本件建物において何回か料理教室を無償で開いたことがあった」という使用目的違反の事情が、賃借人側から出ました。これについて、自白が成立するか否か、自白が成立するとして撤回が許されるか否かが問われています。「使用目的に違反」という問題文の文字にてらせば、司法試験委員としては、用法遵守義務違反(民法第616条、第594条第1項)の請求原因が追加されたとの争点整理を前提として、これについて、賃借人が先行自白し、賃貸人がこれを援用したとして、自白を成立させるべきか否か(又は自白を成立させたとして撤回が許されるか否か)を正解筋として想定している可能性が高いと考えられます。

これに対し、信頼関係破壊そのものを賃貸借契約の解除原因とするとの法的主張が存在し、仮に、信頼関係破壊解除の請求原因が追加された場合、上記使用目的違反の事実は、信頼関係破壊の評価根拠事実となります。

答案上は、①用法遵守義務違反の事実を主要事実と認定した上で自白の成否/撤回の可否を論じるという正解筋の他、②信頼関係破壊解除の評価根拠事実を主由生事実と認定した上で自白の成否/撤回の可否を論じるという別解筋も想定されるということになります。

そのため、②の筋で論じた受験生が相当数いる場合、用法遵守義務違反を自白の対象事実と認定しなくても、加点される可能性は十分にあるといえます。

 

令和6年司法試験刑事系第2問設問2【捜査②】

「Pは、同年10月3日、同ビルの所有者及び管理会社の承諾を得て、同ビル2階の前記窓のそばにビデオカメラを設置し、同日から同年12月3日までの間、毎日24時間、本件アパート201号室の玄関ドアやその付近の共用通路を撮影し続けた【捜査②】。撮影された映像には、同室玄関ドアが開けられるたびに、玄関内側や奥の部屋に通じる廊下が映り込んでいた。」との事実関係を元に、当該捜査が強制捜査か任意捜査かのいずれに該当するかを検討することが第一歩となります。

①私的領域に侵入する方法での撮影該当性の有無、②①の判断において撮影範囲(玄関のみならず奥の部屋に通じる廊下を含む)や方法の他、撮影時間を考慮すべきか、という点で見解が分かれるところかと思います。

撮影時間の長短については、「撮影時間が長くなればさまざまな情報が集積することになるから、その結果として私的領域への侵入と同視することができれば強制処分に該当するとの考え方もありえるが、…類型的に判断するのであれば、撮影対象が私的領域であったか否かが重要」(『基本刑事訴訟法Ⅱ論点理解編』(日本評論社)18~19頁)とする立場が通説的であるため、①を争点設定とした上で、撮影時間を考慮せず主に撮影範囲等を考慮して強制処分該当性の有無を判断し、その際、「情報の集積によって生活状況が把握できるほど長期間にわたって撮影」(同31~32頁)した事案で任意捜査と判断したさいたま地判例平30年5月10日との事案の相違を意識するなどして、強制/任意処分を結論づける、といった筋が試験委員の想定している正解筋と考えます。

もっとも、上記記述にある通り、撮影時間を考慮することで、捜査の質的変化が生じ、強制処分と評価しうる場合がある、とする立場もないわけではないので、この点について、説得的に論じることができていれば、撮影時間を考慮して強制処分と認定した答案も、別解筋として加点がなされる可能性があります。

 

最後に

受験生としては問題文を読みながら正解筋を想定することと同じくらい、正解筋を外した場合に加点されるよう、瑕疵を最小限にする(悩みがある部分は基本に立ち返って論理的に論じる、問題文の文字を流用する、自信のある部分とない部分とを明確に区別できるような答案を書く等)ための技術が重要となります。

令和6年司法試験公法系問題雑感

【第1問(憲法)】

規制①で職業の自由、規制②で営利的表現の自由がそれぞれ問われています。

規制①については、規制目的が、いわゆる典型的な消極目的規制、積極目的規制のいずれにも該当しないことが明示されており、その上で、新規参入業者と既存業者の双方の立場に言及があります。薬事法違憲判決を指摘する場合、同判決とは異なり規制目的が典型的な消極目的規制ではないことを示す必要があります。供給の抑制を目的として認定する場合、その合理性についても一定の配点があるとみるべきでしょう。その場合、目的審査を軽視しない姿勢が重要となります。

規制②については、営利的表現の性質を踏まえて審査基準を設定した上で、イラスト、写真又は動画の性質を踏まえて、あてはめを行うことになると考えます。

 

【第2問(行政法)】

設問1(1)で処分性が、設問1(2)で処分の違法理由が、設問2で違法の承継がそれぞれ問われています。

設問1(1)の処分性では、本件事業計画変更認可が宅地所有者等の法的地位に与える影響を特定した上で、直接具体的法効果性を肯定すべきかを検討します。また、誘導で明示はされていませんが、権利変換処分との関係を踏まえ、紛争の成熟性に言及する余地もあります。

設問1(2)では、誘導文の「第一に~」で手続的瑕疵が、「第二に~」で実体的瑕疵が問われているようです。実体的瑕疵については、行政計画であることと政策的技術的判断が必要であることから裁量論に流した答案が相当数あるのではないでしょうか。

設問2では、違法の承継の判断枠組みが問題文中に示されています。規範定立よりもあてはめで差をつけたいという出題者の意図によるものかもしれません。

 

上記雑感は本試験の出題趣旨や正解筋を断定するものではありません。受験生の皆様の過去問検討のきっかけとなれば幸いです。