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同時履行の抗弁に対する履行の提供の再抗弁

同時履行の抗弁に対する履行の提供の再抗弁は主張自体失当として認められることはありませんが、こうした論点に導入する際に書き方に迷うことはよくあります。「同時履行の抗弁に対する履行の提供の再抗弁が認められるか」とするといかにも論点主義的であり気持ち悪さが残ります。

 

|「論点主義」とは何か

司法試験受験業界における「論点主義」とは多義的ではありますが、私は「当該問題との関連性が明らかでないにもかかわらず論点を展開する手法」であるととらえています。言い換えると、当該問題との関連性を示していれば論点を展開したからといって「論点主義」とされることはありません。具体的には、①問題文の事実と絡めて問題提起を行う②法的な効果(問題文から検討を求められている効果)と絡めて問題提起を行う③従前の議論を受けた形で問題提起を行う、といった形をとれば、「論点主義」とされることを回避できます。

 

|法律上の主張が成立すると仮定して事実を先出しする手法

(例)同時履行の抗弁に対する再抗弁としての履行の提供の主張

Xは、Yに対して取立債務たる本件債務について目的物を用意し(「弁済の準備」)、これを電話で伝えて取りに来るよう求めている(「通知してその受領の催告」)から、「弁済の提供」(493条)があったとして、同時履行の抗弁が認められないと再反論をする。この反論は認められるか。

仮に法律論として成り立つとすれば・・・という仮定のもと、事実を使って問題提起を行っています。問題文中に”取立債務について弁済の提供を行ったと認定しうる事実”が存在しているからこそ「同時履行の抗弁に対する履行の提供の再抗弁が認められるか」という論点が登場するわけです。この点を押さえて問題提起を行うことで、「論点主義」的な答案を回避することができます。

 

「論点主義」を回避する手法はいろいろありますが、上記のように、法律論レベルで切られる主張であっても敢えて事実から問題提起を行うことで当該事案との関係で必要な考察を尽くしているとの印象を与えることができます。