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処分性検討における「権利救済の実効性」の位置づけ

処分性(行政事件訴訟法3条2項)検討における「権利救済の実効性」の位置づけについては諸説あります。中には、①公権力性、②直接具体的法効果性、③権利救済の実効性の3要件で処分性を検討するべきであるという立場もあるようですが、①②が明らかに認められる場合に③を要件として別建てすることの合理性は考えにくいです。以下では私の整理を述べます。

 

| 権利救済の実効性が問題となる場合

権利救済の実効性が問題となるのは、形式論理によれば処分性が否定される場合(特に直接具体的法効果性が否定される場合)です。この場合に、実質的な議論を介在させることで、直接具体的法効果性の認定を少し緩やかに行うとするのが、近年の判例・裁判例の立場だと理解することもできます。もっとも、単純に直接具体的法効果性の認定を緩和することで、処分性の範囲が無制限に広がるおそれもあります。そのため、直接具体的法効果性を緩和して認定する際には「権利救済の実効性」が肯定されることを要求することで、処分性の範囲を合理的に限定するということが考えられます。

 

| 答案ではどう書くか

上記のような理解によると、「権利救済の実効性」を要件として挙げる場合と挙げない場合とが存在することになり、論理一過性が失われます。また、処分性の要件として、①公権力性、②直接具体的法効果性を挙げた上で、別に③権利救済の実効性を要件とすることで、法的三段論法が崩れるおそれもあります。そのため、私は、以下のように検討をしています。

・処分の意義

・処分の要件(①公権力性、②直接具体的法効果性)

・①公権力性が認められる。

・②直接具体的法効果性が認められるか

  たしかに認められないとも思える。

  しかし実質的に検討すると直接具体的法効果性が認められる。

  なお、この結論は、権利救済の実効性の見地からも妥当である

  したがって、②直接具体的法効果性が認められる。

下線部において、「なお書き」で権利救済の実効性に言及することで、全体の論理を邪魔することなく、判例を踏まえた論述をすることができます。ちなみに、土地区画整理事業認可について処分性を肯定した判例最判平成20年9月10日)も、「実効的な権利救済の見地から『も』」として、権利救済の実効性について、結論の合理性を支える要素として付加的に言及しています。

 

| 権利救済の実効性のみで処分性を肯定しない

注意しなければならないのは、権利救済の実効性というマジックワードで処分性を安易に肯定してはならないということです。あくまでも、何らかのロジックにより、直接具体的法効果性を肯定しうるということが前提です。この点において、例えば、条例という形式をとっていても実質的に対象が特定されているから具体性を肯定しうる、土地区画整理事業認可がなされたことで「換地処分がなされうる法的地位」を認めて法効果性を肯定しうる等、明確にロジックを示したうえで、「なお…」として権利救済の実効性に言及することになります。配点があるのはあくまでも「ロジック」なので、この点に注意してください。