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文面審査のポイント

この記事では違憲審査基準の一類型である文面審査について解説します。

 

| 違憲審査基準とは

司法試験の「憲法」では法令の憲法適合性が問われます。この憲法適合性を判断するための基準を(法令違憲の)違憲審査基準とします。違憲審査基準は①文面審査と②実体審査に大きく分かれます。文面審査とは立法事実を考慮せず法律の文言のみをもって行う違憲審査です。これに対し実体審査では立法事実を考慮します。


| 文面審査の内容

違憲審査基準の1種である文面審査には上記の通り「漠然不明確故に無効の法理」「過度広汎故に無効の法理」とがあります。いずれも、刑罰規定ないし表現の自由規制について用いられる法理です。「漠然不明確故に無効の法理」は違憲と合憲との境目が曖昧であるがゆえに刑罰規定の自由保障機能を害し、ないし表現に対する萎縮的効果を及ぼすとの理由から違憲無効とされます。「過度広汎故に無効の法理」は違憲と合憲との境目が一応見えるものの違憲の範囲が広すぎるがゆえに無効とするものです。司法試験との関係では「漠然不明確故に無効の法理」が出題されることが多いため以下ではこれについて説明します(なお、2つの法理は似て非なるものですから、双方問題となる場面があるにせよ、両者を区別することが求められます)。

 

| 漠然不明確故に無効の法理

抽象的な規制文言が規定されている場合に漠然不明確故に無効の法理により当該規制規定が無効となるかを検討します。ここでは、合理的な限定解釈の可否が争点となります。すなわち、一見漠然不明確に見える文言でも合理的な限定解釈が可能であれば、同法理によっては違憲無効とならないのです。この合理的な限定解釈の可否について判断したのが徳島市公安条例事件(最判昭和50年9月10日)です。この判例「刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法三一条に違反するかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによってこれを決定すべきである。」としました(最高裁番所HPより)。すなわち、かかる基準が読み取れる場合には合理的な限定解釈が可能であり、同法理によっては違憲無効とはならないと判示したのです。

 

| 答案作成戦略

実際の答案作成戦略においては①文面審査を実体審査の前段階で検討すること②文面審査は端的に検討すること、の2点を押さえておく必要があります。

【論述例】

1 法●条は、・・・する自由を侵害し違憲無効となるか。

(1)・・・する自由は、「表現の自由」(憲法21条1項)として保障される。

(2)法●条は・・・する自由を規制する。

(3)では、法●条における「・・・」という文言が、漠然不明確故に、萎縮的効果を及ぼしうるとして違憲無効か。

「・・・」については、・・・であるから、~と解釈することができ、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れる。

よって、法●条は、漠然不明確故に無効とはならない。

(4)・・・の自由は重要な権利であり・・・(以下略)

※下線部が徳島市公安条例事件判決の判旨を意識した内容となっています。通常であれば、同判例の規範を明示した上であてはめます。しかし、そもそもそういった解釈が可能かどうかという議論はえてして水掛け論であり答案で展開することは妥当ではありません。そのため、一定の解釈が導かれることを(可能であれば理由を付して)示し、かかる限定解釈が可能であることをもって同法理によっては無効とならないと結論付けるのがよいでしょう。

 

| 最後に

以上が文面審査のうちの「漠然不明確故に無効の法理」の書き方になります。受験生がミスしやすいポイントは①刑罰規定でも表現の自由規制でもない場合にこの基準を用いる②「明確性原則」としてまとめて書くことで「漠然不明確故に無効の法理」と「過度広汎故に無効の法理」とを区別していないかのような答案になる③~基準が読み取れるとしながら限定解釈の結果を示さない④設問で文面審査が不要であると指示されているにも関わらず文面審査を展開するといった点があります。これらの点に気を付けつつ上記の論述例を理解していただければ文面審査はクリアできるかと思います。