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民事訴訟法で具体的な答案を書くために

民事訴訟法で具体的な答案を書くためには、実体法科目とは少し発想を変える必要があります。民事訴訟は、私的紛争の公権的解決手段であるところ、民事訴訟法の主眼は「公権的解決」としてのプロセス、すなわち訴訟手続にあります。実体法科目に慣れていると、「私的紛争」の中身に注意が向かいがちですが、民事訴訟法ではあくまでも訴訟手続にかかる事情を拾っていくことが重要です。もっとも、民事訴訟法は民事実体法と切り離して存在するものではありません。そこで、民事実体法との関連性を意識した論述をすることも求められます。

 

|民事実体法の条文を指摘する

民事訴訟法の条文を指摘することはもちろんですが、民法、商法、会社法といった民事実体法の条文も丁寧に指摘しましょう。主戦場ではないですが民事実体法の条文が指摘されているだけで具体的な答案であるという印象を採点者に与えることができます。

 

|訴訟物・要件事実を特定する

処分権主義違反を検討するためには請求の内容や訴訟物を特定する必要があります。既判力の客観的範囲は原則として訴訟物に限られます。弁論主義の適用範囲は主要事実に限られます。このように、民事訴訟法の重要論点についてあてはめを行うためには、訴訟物・要件事実を特定することが必要です。「本訴訟にかかる訴訟物は・・・であり、原告の主張の骨子は・・・(法律構成)であるところ(裁判所は・・・(法律構成)と認定しようとしているところ)、〇〇〇という事実は、主要事実たる請求原因事実にあたる。よって、弁論主義第1テーゼの適用がある。」等として、要件事実を特定しながら弁論主義を論じると具体的な答案になります。

 

|訴訟手続にかかる事情を拾う

前訴において主張できた事実を後訴で主張しない、訴訟手続上とるべき手段があったにもかかわらずこれをとっていない、当事者が主要な争点として認識していない、一方が本人訴訟である、等、訴訟手続にかかる事情を豊富に拾っていきます。もっとも、訴訟手続それ自体は安定性が要求される部分もありますので、常に結論ありきで議論をするわけにもいきません。柔軟な解決が求められる場面を見抜いて、事情を拾いましょう。

 

民事訴訟法は、定義や規範など暗記すべき事項が多いこと、条文にない概念が多いこと、から、どうしても抽象的な答案になりがちです。しかし、現行司法試験では、民事訴訟法も充実した具体論を展開することが求められているといえます。上記3点に注意しながら、自身の答案を分析してみてください。