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最近流行していると思われる憲法答案のスタイルについて

受験生の答案を添削していると、最近以下のような憲法答案のスタイルが流行しているようです。

 

<流行の答案スタイル(※便宜上の呼称です)>

 

法n条は、①・・・を禁止しているところ、②・・・は「表現」(憲法21条1項)にあたるため、表現の自由を規制する。

 

これは、①で規制を認定し、②で権利保障を認定します。司法試験憲法の事案分析過程において「まず規制に着目する」という姿勢は正しく、この姿勢を素直に答案上に表現するとこのような書き方になるものと思われます。しかし、この書き方には1つの難点があります。それは、違憲審査基準設定段階における「権利の性質」の検討ピンボケするということです。

 

「権利の性質」で論じるべき「権利」は、表現の自由一般ではなく、本件で問題となっている具体的な権利です。すなわち、「・・・の自由」(具体的な権利)の性質を問題にしなければなりません。しかしながら、上記『流行の答案スタイル』では、規制対象の権利が「表現の自由」であるためか「表現の自由」一般の性質を大展開するという傾向が見られます。実際に配点が振られているのは「・・・の自由」の性質です。そのため、違憲審査基準設定においてもこの点に筆を割く必要があります。

 

『流行の答案スタイル』を用いた結果、ピントがぼけた論述になっている答案も少なくないため、流行の答案スタイルを用いる際には、注意が必要です。

伝聞法則の論じ方

司法試験の刑事訴訟法では伝聞法則が頻出ですが、受験生の多くが苦手としている分野です。この記事では、伝聞法則の論じ方の基礎を解説していきます。

 

|伝聞証拠の意義

伝聞法則の意義は①公判廷外の供述で②要証事実との関係で内容の真実性が問題となるものと説明されることが多いです。この意義をかみ砕いて説明すると①公判廷外の供述=本当かどうかわからない、②要証事実との関係で内容の真実性が問題となる=間違いだと困るということです。

 

|伝聞法則の論点は何を問うているのか

司法試験で伝聞法則が出題される場合は、多くの場合、上記①②を満たすかすなわち、伝聞証拠として原則として証拠能力が否定されるか、という点が問われます。出題者は、この論点を問うことにより、要証事実に対する理解と証拠構造を把握する力を問うています。受験生としてもこの部分に配点があると考えて問題を検討するべきです。

 

|「AがVを包丁で刺すのを見た」というWの日記

目撃者Wの日記において、被告人Aが、被害者Vを包丁で刺すのを見たという内容が記載されていたとします。この日記を証拠とする際に、伝聞証拠にあたるか否かが問題となります。まず、①について検討をします。①について検討する際は「誰の」供述かを特定します。この日記は、公判廷外でWが書いたものですから、「公判廷外におけるWの供述」ということができます(※供述は話し言葉、書き言葉、動作による言葉のいずれも含む)。次に②について検討をします。ここでは、要証事実(当該証拠によって証明しようとする事実)を特定します。例えば、「Wが日本語を読み書きできたこと」を要証事実する場合もあれば、「AがVを包丁で刺したこと」(Aの犯人性及び殺害行為)を要証事実とする場合もあるでしょう。要証事実は無数に想定されます。仮に、前者の要証事実の場合、Wの日記の存在自体を立証すれば足りますから、内容の真実性は問題となりません。後者の要証事実の場合、内容が真実でなければ立証につながりませんから、内容の真実性が問題となります。

 

|要証事実と立証趣旨との関係

端的に説明すれば、立証趣旨は当事者が設定するものであり、要証事実は裁判所が認定するものです。当事者主義的訴訟構造より、通常は、当事者の設定した立証趣旨を参照して裁判所が合理的な要証事実を認定します。そのため、立証趣旨と要証事実とは整合する場合が多い(司法試験においえては立証趣旨の文言をそのまま要証事実に使えることも少なくない)ですが、場合によっては、立証趣旨をにらみつつ、自分の言葉で要証事実を設定する方が答案を書きやすいこともあります。

 

|答案を書いてみる

では、実際に答案を書いてみます。

 

(伝聞証拠の意義)

本日記は、Wの公判廷外の供述である(①)。

立証趣旨は、AがVを殺害したことである。

本日記により、AがVを殺害したとの事実が基礎づけられるから、かかる事実を要証事実と解する。

そして、本要証事実を立証するためには、供述内容が真実であることが前提となる。

したがって、要証事実との関係で内容の真実性が問題となる(②)。

以上より、本日記は伝聞証拠にあたる。

 

ポイントは下線部です。立証趣旨に触れつつ、裁判所の立場で立証趣旨を参照して要証事実を設定していきます。この要証事実設定の中で、証拠構造も明らかにします。

 

いかがでしょうか。伝聞法則は非常に理解しにくい分野ではありますが、論点の本質と、出題意図をつかめば、それほど難しいものではありません。もちろんバリエーションは多岐にわたりますが、その点は、演習を通じて身につけていってください。

民事訴訟法で具体的な答案を書くために

民事訴訟法で具体的な答案を書くためには、実体法科目とは少し発想を変える必要があります。民事訴訟は、私的紛争の公権的解決手段であるところ、民事訴訟法の主眼は「公権的解決」としてのプロセス、すなわち訴訟手続にあります。実体法科目に慣れていると、「私的紛争」の中身に注意が向かいがちですが、民事訴訟法ではあくまでも訴訟手続にかかる事情を拾っていくことが重要です。もっとも、民事訴訟法は民事実体法と切り離して存在するものではありません。そこで、民事実体法との関連性を意識した論述をすることも求められます。

 

|民事実体法の条文を指摘する

民事訴訟法の条文を指摘することはもちろんですが、民法、商法、会社法といった民事実体法の条文も丁寧に指摘しましょう。主戦場ではないですが民事実体法の条文が指摘されているだけで具体的な答案であるという印象を採点者に与えることができます。

 

|訴訟物・要件事実を特定する

処分権主義違反を検討するためには請求の内容や訴訟物を特定する必要があります。既判力の客観的範囲は原則として訴訟物に限られます。弁論主義の適用範囲は主要事実に限られます。このように、民事訴訟法の重要論点についてあてはめを行うためには、訴訟物・要件事実を特定することが必要です。「本訴訟にかかる訴訟物は・・・であり、原告の主張の骨子は・・・(法律構成)であるところ(裁判所は・・・(法律構成)と認定しようとしているところ)、〇〇〇という事実は、主要事実たる請求原因事実にあたる。よって、弁論主義第1テーゼの適用がある。」等として、要件事実を特定しながら弁論主義を論じると具体的な答案になります。

 

|訴訟手続にかかる事情を拾う

前訴において主張できた事実を後訴で主張しない、訴訟手続上とるべき手段があったにもかかわらずこれをとっていない、当事者が主要な争点として認識していない、一方が本人訴訟である、等、訴訟手続にかかる事情を豊富に拾っていきます。もっとも、訴訟手続それ自体は安定性が要求される部分もありますので、常に結論ありきで議論をするわけにもいきません。柔軟な解決が求められる場面を見抜いて、事情を拾いましょう。

 

民事訴訟法は、定義や規範など暗記すべき事項が多いこと、条文にない概念が多いこと、から、どうしても抽象的な答案になりがちです。しかし、現行司法試験では、民事訴訟法も充実した具体論を展開することが求められているといえます。上記3点に注意しながら、自身の答案を分析してみてください。

演習型学習の「マンネリ化」を防ぐ

司法試験・予備試験ための問題演習を長くやっていると「マンネリ化」という現象が起きます。「マンネリ化」が続くと、新たな発見が得られず、学力が向上しません。この記事では、演習型学習の「マンネリ化」を防ぐためのアイデアをご紹介します。

 

|「演習」で鍛えられていない「力」に着目する

演習型学習というと短文事例問題の答案構成を行うことが多いと思います。しかし、実際に司法試験・予備試験の本番では答案構成から答案作成を行わなければなりません。答案構成だけを繰り返していても答案構成から答案作成につなげる力を養うことはできません。また、答案構成を漫然とこなしているだけでは答案構成を省力化しようという意識も生まれません。本試験では時間との闘いになるため(特に既知の事項については)極力答案構成を省力化することが有効です。このように、日々の演習の中で実は鍛えられていない力(答案作成力や答案構成省力化力)に着目してこれらを強化する勉強を取り入れてみるとよいと思います。

 

|解答筋を「思い出す」勉強からの卒業

短文事例問題を何度も繰り返していると解答筋を思い出す勉強になってしまいます。しかし本試験では複数の筋を想起しそこから1つの筋を選択する思考プロセスが求められます。本試験での思考プロセスを再現するためには、見慣れた問題でも、事実・条文・原理原則のみからこれまでとは別の筋も立てられないかを検討することが重要です。ここで検討した別の筋が不適切だとしても理由をもって納得することで本試験でのミスを回避することができます。見慣れた問題を一段高いレベルから検討し直すことで、解答筋を「思い出す」勉強から卒業し、大幅なレベルアップを図ることができます。

 

|問題をセレクトして高速回転する

1科目あたり50問程度の演習用教材を繰り返している受験生は多いと思いますが、毎日10問検討しても1科目回すのに5日間かかります。7科目であれば35日かかります。これでは、頭の中に当該科目の体系を構築することが難しくなるかもしれません。そこで、各科目10問程度、各分野から幅広く問題をセレクトし、セレクトした問題を1日で解ききるということを繰り返します。この方法をとることで、各科目の全体像を短期間で頭になじませることができ、全体を俯瞰することが可能になります。

 

いかがでしょうか。演習型学習は司法試験・予備試験対策では重要ですが、「マンネリ化」のリスクと隣り合わせです。「マンネリ化」を戦略的に回避し、学力を向上させていきましょう。

司法試験短答式試験で高得点を狙う

現行司法試験は短答式試験論文式試験の合計点で合否が決まります。また、短答式試験で不合格になってしまうと論文式試験が採点されることはありません。そういう意味でも、受験生としては、短答式試験を軽視すべきではありません。この記事では短答式試験に対する取り組み方をご説明します。

 

|短答合格率100%を目指す

どんな試験にもゲーム性があります。十分な知識やスキルがあっても「事故」により不合格になることはあります。しかし、令和3年司法試験の結果を見ると予備試験合格者の短答式試験合格率は100%となっています。これは驚異的な数字です。予備試験合格者は繰り返し短答に合格することで短答に合格するために必要な知識やスキルを身に着けています。これらを身に着けてさえいれば「足きり」としての短答式試験であれば100%突破できるということです。短答式試験自体には不確定要素がありますが、現行司法試験の「足きり」に限って言えば、「ゲーム性」は限りなくゼロに近いということがわかります。短答合格率100%を目指すことは可能なのです。

 

|短答で高得点を狙う

短答式試験全体の配点は論文式試験1科目の配点と同じです。短答で合格者最低ラインを17.5点上回ることができれば、論文式試験で1科目10点分水増しできるという計算になります(論文の素点は1.75倍されて短答の素点と合計される)。これは45点の答案が55点になるということです。A~Eの評価が数段階変わるくらいの幅です。論文と異なりある程度出題される内容を予測できる短答式試験できちんと高得点を狙うことには大きな意味があります。

 

|過去問演習では知識を「整理」する

過去問を10周しても100周してもそれだけでは短答の力は向上しません。大切なことは知識を「整理」することです。条文ベースで整理すればよいと思っている方もいますがそれだけでは不十分です。類似の概念・制度(憲法司法権の限界、民法の地上権・地役権・永小作権等)を比較したり、本来異なるものでも同一の文言で説明される概念(民法の「放棄」や「催告」等)を整理したりすることはとても重要です(私はは、特に民法の択一六法には関連条文をメモしていました。そして当該条文を引くたびに関連条文を毎回引くように意識していました。)。時には表や図を使って整理することも有効です(その際は自作の表や図を用いて記憶喚起する練習までしましょう。私は初学者の頃、「民法図表20」みたいな自作教材を作り、択一の問題を解くたびにこの図表を見ながら解いていました。こうすることで図表が頭に入ります)。

 

|わからないことは調べる

司法試験の学習がある程度進むと択一は基礎・論文は応用という思い込みに支配されます。しかし、択一プロパーと呼ばれる部分については基礎知識すら応用レベルに難しいということがあります(私は、先取特権や、弁済の代位といった論文で出題されにくい知識は基本書を読み込み、きちんと理解をするようにしていました)。理解できていないことを記憶することは不可能です。急がば回れの精神でわからないことをきちんと調べて確実に知識を積み上げていきましょう

 

|選択肢の読解力

論文式試験が「書く試験」だとすると短答式試験は「読む試験」です。どれだけ論述力があっても短答式試験では無意味です。自分が選択肢をきちんと読むことができているか常に精査しましょう。短答の選択肢は読みにくいものが多いです。1文の中に複数の情報が盛り込まれていることも少なくありません。主語・述語・修飾語の関係を意識しながら文意を正確に読み取りましょう。

 

|処理能力を身に着ける

処理能力も重要です。科目によっては時間配分ミスを起こすこともあります。分野別の問題を解くこともよいですが、定期的に年度別の問題を解くことで、本試験を想定した実践的な演習を行い、処理能力を高めることが大切です(私は①知識問題をまず解き、②次いで事案処理問題を解くという順序で解いていました。知識を思い出すという思考と事案を処理するという思考は質的に異なるため同じ質の思考を連続的に行う方が脳に与える負荷が小さいと考えたためです)。

 

【補足】ケアレスミスを防ぐためのコツ

次のA~Eのうち誤っているものを2つ組み合わせたものを選べ。

A・・・

B・・・

C・・・

D・・・

E・・・

↑このような問題が出た際には、「誤っている」の部分に大きく×を付け、各選択肢の正誤を判断して、〇又は×を書いていきます。そうすれば、「×」を2つ組み合わせたものが正解になります。選択肢の正誤のみを判断すれば自動的に正解を導ける「仕組み」を作ることも大切です。

 

いかがでしょうか。短答式試験は、100%合格し、なおかつ、高得点を狙うべきものです。合格者は様々な学習ノウハウを持っています。「自分には無理だ」とあきらめることのないよう、全力で短答式試験を突破してください。

出題趣旨・採点実感の読み方

司法試験において出題趣旨・採点実感は法務省が発表した「一次情報」です。そのため、これらの資料から受験生が得られる情報は極めて大きいです。しかし、一方で使い方が難しいという難点もあります。この記事では、出題趣旨・採点実感の読み方を解説します。

 

|「参考答案」とあわせて読む

出題趣旨・採点実感だけを読んでもどのように答案に落とし込めばよいかわからないのが通常です。そのため、必ず「参考答案」とあわせて読み、「出題趣旨・採点実感の記述を答案に落とし込んだらどうなるか」ということを確認してほしいと思います。

 

|「難しい部分」は飛ばす

出題趣旨・採点実感は当該問題におけるポイントをもれなく書いています。しかし、中には、受験生にとって非常に難しい議論も含まれています。現時点での自分自身の知識と出題趣旨・採点実感に書いてあることとの間にGAPがある場合、出題趣旨・採点実感を「丸暗記」するという勉強になりがちです。しかし、これでは何の意味もありません。「難しい部分」についてはいったん飛ばして先に進むのも1つの方法です。

 

|「優秀」「良好」「一応の水準」に騙されない

受験生はすべての検討事項について「良好」ないし「一応の水準」に到達していれば合格すると考えて勉強しがちです。間違いではないですが、学習段階では検討事項ごとに濃淡をつけるべきです。

 

  再出題可能性が高い事項 「優秀」を目指す

   上位再現答案を参考に上位A答案を書けるようにする

  あてはめにかかる事項  「優秀」を目指す

   参考答案を見ながら事実の使い方を学ぶ

  理解が難しい事項    「一応の水準」を目指す

  その他の事項      「良好」を目指す

 

「再出題可能性が高い事項」すなわち超重要論点は学習する際のコストパフォーマンスが高いです。そのため「優秀」を目指して勉強してほしいです。また、あてはめにかかる事項は、技術的な要素が強いため、やはり「優秀」を目指してほしいです。一方で、理解が難しい事項については、問題文から解きほぐせるレベルまで理解できれば十分であり、むしろ、解きほぐし方を重視して勉強するべきです。その他の事項(いわゆる少しマイナーな典型論点)については、学習段階もありますが、まずはある程度書けるレベルを目指すのがよいでしょう。

 

| 情報を一元化する

出題趣旨・採点実感における各論点の解説部分を自身の教材に一元化しましょう。私は、辰巳出版の「趣旨規範ハンドブック」に必要な情報をメモするなどしていました。出題趣旨・採点実感は、「一度読んだら二度と読まない」くらいの気持ちで勉強をするのがよいと思います(そうでもしないと時間ばかり食って先に進まない)。

 

出題趣旨・採点実感は確かに有益な資料ではありますが、情報量が多いため、無策で取り組むと大変なことになります。メリハリをつけて有効活用してください。

令和3年司法試験の結果発表を受けて

昨日は令和3年司法試験の結果発表でした。

 

www.moj.go.jp

 

令和3年司法試験に合格された方本当におめでとうございます。法科大学院を修了し、あるいは、予備試験を突破し、受験資格を取得した上での本試験合格は本当に大変だったと思います。すぐに司法修習に進む方はあわただしくなると思いますが、体調に気を付けて準備をしてください。

 

さて、以下は、令和3年司法試験に不合格だった方に対してです。各自の置かれた状況は様々だと思いますが、令和4年の司法試験受験を決意している方は(環境調整も含めて)直ちに受験準備を始めるべきです。お世話になった方への不合格報告等「礼儀」も大切ではありますが「礼儀」より「合格」です。報告や挨拶はほどほどにし、受験準備に取り掛かりましょう。この記事では、司法試験再受験にあたっての注意点についてお話ししたいと思います。

 

| 令和3年合格者の体験談を過信しない

私自身もそうですが、司法試験合格者としての自己評価はこの瞬間がピークです。しかし、どの合格者も合格は一度しか経験していません。そのような合格者が、自己評価の高まり故に、自身の経験を一般化して再受験生に伝えるということもよくあります。合格者の体験談は重要ではありますが、絶対視することなく、あくまでも「ツール」として活用する程度にとどめましょう。

 

| 自分自身の「甘さ」を認識する

司法試験業界は受験生に過剰に優しいです。しかし、私は、敢えて言います。受験に落ちる人は「甘さ」を抱えていることが少なくありません。私は、大学受験時代に1年間浪人しました。現役時は「京大の問題は難しいからわからなくても現場で考えれば大丈夫」だと思っていました。しかし、それでは、65%くらいの得点しかとることができず、医学科を突破するための70%のラインを超えることはできませんでした。そこで、浪人時は「分からないことをなくす」つもりで勉強しました。結局「難問はわからないくていい」という甘えが現役時の不合格を生んだのです。司法試験にも同じことが言えます。上位合格者が「簡単だ」と感じている問題を、不合格者が「現場思考問題」だと感じているということもあります。こうした感覚の差を埋めていくことも再受験生のタスクです。

 

| やみくもに勉強しない

受験勉強は「クレバー」に行ってください。勉強量が足りないからと勉強時間を増やしたり、演習量が足りないからと問題集を買い込んだりといった「やみくも」な勉強は逆効果です。私がおすすめなのが、令和3年の合格者(知り合いと話をするのが苦しければ全く知らない人でもよいです)と会話をしてみることです。これにより、合格者の知識水準を知ることができます。合格者が自分が曖昧にしか記憶していなかった定義や規範を明確に記憶しているのであれば定義規範を完全に丸暗記して即答できることを目指すべきです。初見の問題だと思っていたのが受験生の中で有名な問題だったということであれば演習対象の教材の質量を見直すべきです(合格水準の受験生のマジョリティが使用しているものか)。自己分析と合格との距離感を測ることは表裏一体です。やみくもに勉強するのではなく、自分自身、そして合格水準の受験生と真剣に向き合いましょう

 

| 来年の本番を想定する

再受験生にありがちなのが「過去問に詳しくなる」ことです。もちろん過去問は重要です。しかし、過去問を暗記しているのではないかという懸念を持って勉強すべきです。来年の本番では必ず初見の問題が出題されます。初見の問題を読み解く思考プロセスと、過去問を思い出す思考プロセスは大きく異なります。この違いを忘れ、過去問を思い出すだけの勉強に終始していては、初見の問題を解くことはできません。過去問分析をする際には、初見の問題を解くつもりで誘導文や問題文中の事実関係を丁寧に読み解き、自分が選んだ筋について確信を持てるか、確信を持てないのであれば妥協策としてどのように対応するか、について、きちんと吟味するようにしてください。

 

| 体調を整える

新型コロナウイルス感染症が流行していますが、それ以外にも体調を崩す原因はたくさんあります。季節の変わり目で風邪をひきやすくなりますし、ストレスから睡眠不足になる方もいるでしょう。しかし、勉強をするためには集中が必要、集中するためには体調管理が必要です。敢えて睡眠時間をしっかりとることも積極的な受験戦略です(知識は睡眠中に整理されるとい報告もあります)。来年の5月まで約9か月間、短いようで長くもあります。着実に成長するために、体調管理に配慮しながら頑張ってください。

 

以上、簡単ではありますが、来年の受験生に向けてのメッセージです。甘さを捨て、クレバーに、本番を想定しつつ、体調を整えながら、9か月間走り抜けてください。